大学1年生の約4人に1人が抑うつ症状を抱えている。大学生は、健康上の不安を共有しにくい状況にある。また、学生の健康を支援する施設としては、大学の保健管理センターがあるが、有効に利用されていない。本企画では、学生の抑うつ症状の軽減・保健管理センターの認知向上を目的に、「出張保健管理センター”Medicar”」を提案する。構内に ”Medicar” を掲げた軽バンを配置し、情報提供や企画を開催することで、新入生が保健管理センターを認知し、学校生活や日常生活の不安を軽減するための知識を取得することを目指す。本企画により、新入生のセルフマネジメント能力の向上と、重症化する前に保健管理センターを受診する学生の増加を期待する。今後は、保健管理センターを受診するための導線を作るべく、学生と医療スタッフの接点を作りたい。
印南麻央 Mao Innami 医学部4年生
村山莉咲 Risa Murayama 医療系サービス会社で勤務
御厨幸治 Koji Mikuriya 大阪の病院と企業で勤務
代田遥菜 Haruna Shirota 東京デザインプレックス研究所 デジタルコミュニケーションデザイン専攻在学中
ライフサイクル上、大学生の時期(学生期)は、精神健康面では、うつ、引きこもり、摂食障害、自殺など、問題が起こりやすい時期であり1、大学1年生の約4人に1人が抑うつ症状を抱えていると言われている2。大学生は、一人暮らしの場合、健康を気にかけてくれる両親が近くにおらず、かつ、高校までとは異なる学校環境の影響もあり、自身の抱えている健康上の不安を共有しにくい状況にある。また、学生の健康を支援する施設としては、大学の保健管理センターがあるが、構内の端に位置しており、健康診断でも施設を利用しないために、認知が低く有効に利用されていない3。
本稿では、学生の抑うつ症状の軽減・保健管理センターの認知向上のため、「出張保健管理センター”Medicar”」を提案する。構内に ”Medicar” を掲げた軽バンを配置し、一人暮らしに役立つリーフレットの配布、”Medicar”内の先輩に学生生活を相談できる機会の設定、新入生座談会の開催などを行う。学生主体の新入生歓迎実行委員会と保健管理センターの共催とし、新生活に疲れを覚える5月以降、新入生が参加しやすい平日の夕方に、構内の人通りが多い場所へ複数回配置することを想定している。構内の端に位置し、意思を持って赴く学生以外の目に触れにくかった保険管理センターを、学生に見える場所へ露出させることで、新入生がセンターを認知し、学校生活や日常生活の不安を軽減するための知識を取得することを狙いとする。
本企画をきっかけに、新入生のセルフマネジメント能力が向上し、重症化する前に保健管理センターを受診する事例が増加することで、健康に学生生活を送りつづけられる学生が増加することを期待する。効果測定としては、健康診断にて認知度を訊ねるアンケートを配布したり、 ”Medicar” が配布するリーフレットに、行動変容に繋がりそうかを訊ねるアンケートのQRコードを搭載したりすることを考えている。今後の展望は、保健管理センターを受診するための導線を作ることである。カウンセリング・精神科に馴染みがない学生がセンターに赴くには、センターでの相談・受診にメリットを認めることが必要なため、手始めに、学生とセンターの医療スタッフが接点を持てるような仕掛けを考えて行きたい。
島井哲志 、長田久雄 、小玉正博「健康心理学・入門ー 健康なこころ・身体・社会づくり」 有斐閣、2009年。
高柳茂美、杉山佳生、松下智子、福盛英明、眞崎義憲、一宮厚、林直亨、淵田吉男、熊谷秋三「大学生のメンタルヘルスの実態とその関連要因に関する疫学研究 -九州大学EQUSITE Study-」『厚生の指標』2017年、第64巻第 2 号、14頁。
https://www.hws-kyokai.or.jp/images/ronbun/all/201702-03.pdf
青山学院大学「10-3 保健管理センターの活動 [到達目標] 本章 Ⅱ.」『全学的な教育・研究への取組』2018年、220頁。
https://www.aoyama.ac.jp/wp-content/uploads/2018/01/life_03.pdf