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お父さんを褒めて支える、家族で取り組む間食管理ツール「正直者カレンダー」

お父さんを褒めて支える、家族で取り組む間食管理ツール「正直者カレンダー」

ABSTRACT

健康診断で悪い数値が出ているのにも関わらず、食生活を改善しない父親。家族は父親の体を心配して改善を促すが、聞く耳を持たない父親を歯痒く思い、本当は責めたくないのに怒ってしまう。普段は仲の良い家族が、健康の話になるとギスギスしてしまう—。

食生活の改善には食事内容の記録が有用と多くの人により提唱されているが、自発的に記録を続けることは非常に難しい。良くない食事をすると記録が嫌になり、やめてしまうケースも考えられる。では、食生活の良し悪しに関わらず気負うことなく記録でき、楽しく自らの食生活と向き合えればいいのではないか。

そこで、「今日もだめでした」「お菓子を減らしたから褒めてほしい」など ”極めて人間らしい状況” を記録し、家族で父親の食生活改善を支えるツール「正直者カレンダー」を企画した。

「ダメな自分も含めて周りに認めてもらう」という従来にない観点から食生活と向き合うことで、家族の絆も深まり、ゆっくりと健康に近づけばいいのではないかと考えている。

AUTHORS

海藤早希子 Sakiko Kaido 会社員
佐藤万純 Masumi Sato 会社員
大淵仁史 Masashi Ohfuchi エンジニア
鴻戸美月 Mizuki Koudo デザイナー
松本千広 Chihiro Matsumoto 医学部一年生

INTRODUCTION

健康診断で悪い数値が出ているにもかかわらず、良くない食生活を続けている父親。家族は父親の体を心配して食生活の改善を促すけれども、聞く耳を持たない父親を歯痒く思い、本当は責めたくないのに怒ってしまう。言われる側もストレスを感じ、父親の食生活が家族間のコミュニケーションに負のループを生んでしまい、普段は仲の良い家族がギスギスしてしまう。

食生活の改善には、食事内容の記録をとることが有効な手段の一つとされている。しかし、自発的に記録を続けていくことは本人が強い意思を持ち、習慣化されない限り難しい。特に、良くない食事をした日には、記録することが嫌になり、やめてしまうケースも考えられる。また、そもそも食事内容に関心のない父親に自らの食生活の改善意欲を持ってもらうためには、食事記録よりもう少しハードルの低い、自らに向き合うためのきっかけが必要なのではないか。そこで、まずは食生活改善の大きな要素であると考えられる「間食」にフォーカスをしたい。間食の内容を気兼ねなく記録でき、その良し悪しを楽しく笑い合えることが、家族で健康について考えなおすきっかけになればいいと考えた。

METHODS

既存の食事記録のメソッドを応用しつつ、「今日も夜食を食べてしまいました」「自分なりにお菓子を減らしたから褒めてほしい」などの ”極めて人間らしい状況” をカレンダーに記録して可視化する。既存の食事記録と異なるのは、エネルギー量や糖質・脂質量といった客観的な基準を指標とするのではなく、主観的に「何を食べたのか(食べなかったのか)」について、「頑張ったのかどうか」という視点で一日を振り返るという点である。正直に「今日はダメだった」と言えば、「ちゃんと反省できてえらい!」と本人を褒める。「今日は少しだけ頑張った」という時も「頑張っててえらい!」と褒める。良い時も悪い時も「褒める」コミュニケーションで、ハッピーに楽しく食事改善に取り組むことができる。

カレンダーは1週間単位で利用できるデザインとする。父親が「今日は間食を我慢した」と申告したとする。すると、それを見た家族は「頑張っててえらい!」とシールを貼って父親を誉める。ポイントとなるのは、一日の総摂取カロリーや栄養バランスではなく、「間食を我慢した」という父親の努力を家族が誉めること。父親の自己肯定感を高め、食生活への意識を高めてもらうとともに、よい食習慣をつくるきっかけとなることを期待する。またがんばりや反省をより長期の視点で振りかえることができるようにしつつ、日々の変化が視覚的に分かりやすい大きさのカレンダーとするため、記録を残すのは1週間分とする。

家族ごとに感じている課題が違えば、父親の現在の食生活に対する関心の高さや目標も違う。そこで、医学的に正しい基準で判断するのではなく、まずは食生活に対する関心を高めてもらう導入としてこのカレンダーを活用する。栄養的に完全な食生活をいきなり目指すのではなく、昨日より今日の自分が、少しでもより良い選択ができるようになればいい、という考え方である。日々自身の食生活を振り返りながらコミュニケーションをとることで、ストイックではなくても少しずつ自分たちなりに健康に近づいていけるのではないかと考えている。

DISCUSSION

大事にしたいのは、お父さんの食生活の改善をお父さん1人が頑張るのではなく、家族全員でコミュニケーションをとりながら、継続して取り組める家族の姿を作ること。

カレンダーを手に入れるストーリーとしては「お父さんに健康で長生き欲しいと願う子供」がショップなどでこの商品を手に取り、プレゼントとしてお父さんに渡すことを想定している。

今回は食生活の改善のなかでも「間食」という要素だけにフォーカスすることで極力記録内容をシンプルにするとともに、継続のハードルが低い取り組みとすることを目指した。実現可能な方法論として、カレンダーによる物理的なものでの見える化を考えた。

なお今回は全員が同居しており、日常的にコミュニケーションをとる家族を想定したツールを企画したが、将来的には、よりさまざまな形の家族に楽しく食生活改善に向き合ってもらえるツールも考えていきたい。

REFERENCE

  1. 『間食について』, 野村病院 予防医学センター, 2021
    https://www.nomura.or.jp/content/files/healthup008.pdf
  2. “エンハンシング効果とは?やっぱり「褒める」のが一番だった”
    https://studyhacker.net/enhancing-effect
  3. 『科学的に幸せになれる脳磨き』, 岩崎一郎, サンマーク出版, 2020