尿路結石症は、食生活、ストレス、遺伝、気候などの要因により発生し、特に食生活との関係が深いと言われている。その予防のためには、1日1.5~2リットルの水の摂取が推奨されている。
しかし、薬でもない、ただの水を飲む行為を継続することは難しい。そこで、「水を飲む」という行為に意識を向けさせるため、パッケージが薬品のようにデザインされたボトル「DHMO (Dihydrogen Monoxide)」を提案する。ボトルは、OEMやクラウドファンディング等を用いたプロトタイプ開発、もしくは国内メーカーとの共同開発を想定する。初期段階として、ECや雑貨屋などで販売を開始し、各媒体を通して本プロダクトの意義を世間に伝えていく。その活動実績を以て医療機関と連携し、尿路結石患者に本ボトルをサンプリング配布することで尿路結石予防に対する有効性の検証を行う。
岩瀬すみれ Sumire Iwase 横浜市立大学医学部医学科1年生
江國翔太 Shota Ekuni ビジネス・デザイナー / コピーライター / エンジニアリング・リサーチャー
仲野由貴子 Yukiko Nakano 一般企業勤務。慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科修士課程修了。
尿路結石症は、腎臓から尿道までの尿路に結石が生じる疾患であり、30~50代の男性、50~60代の女性に多く発生し、成人男性の7人に1人が罹患すると言われている発症率の高い疾患である1。発症時には激しい痛みを伴うことも多く、結石が体内に長く停滞すると、腎盂腎炎などの尿路感染症にかかったり、腎機能に障害をきたしたりする可能性がある。また、再発率が非常に高いため、治療を行った後も予防を継続する必要がある1。
尿路結石の要因は、食生活、職業、ストレス、遺伝、気候など複雑に関係しているが、中でも食生活との関係がもっとも深いとされている2。コーヒーや紅茶の飲み過ぎ、コンビニ弁当の食べ過ぎなど、現代の暮らしに溶け込んでいる食生活は尿路結石を招く要因になっており、予防するためにはこれらの食生活を見直す必要がある。日常生活に比較的取り入れやすい予防法の1つが、水分を多く摂取することである。一方で、コーヒーや紅茶、緑茶はカフェインやシュウ酸を含んでいることから、尿路結石予防の観点では逆効果と言われている。実際、罹患者は1日1.5〜2リットルの水の摂取を医師から推奨されている3。しかし、処方薬でもない、ただの水を飲むことを習慣化することは難しい。
そこで、軽視されやすい「水を飲む」という行為が持つ健康への効果に意識を向けさせ、日常的に水を摂取したくなる仕組みが必要である。
「水を飲む」という行為が持つ健康への効果を伝えるため、「DHMO(DiHydrogen MonOxide) BOTTLE」と名付けた薬品のようなパッケージデザインのボトルを提案する。視覚情報は人間の知覚の多くを占めると言われており、パッケージが消費者に与えるインパクトは強大である。また、飲んだ量を目視で確認できるよう、パッケージに目盛りを設ける。サイズは、一般的なペットボトルと同じ容量で持ち運びがしやすい500mLと、補充の回数が少ない800mLの2サイズを展開し、それぞれ1日3〜4回、2〜3回、中身を補充しての使用を想定する。
ボトルは、OEMやクラウドファンディング等を用いたプロトタイプ開発、もしくは国内メーカー(象印、サーモス、KOKUYOなど)との共同開発を想定する。初期段階として、ECや雑貨屋などで販売を開始し、各媒体を通して本プロダクトの意義を世間に伝えていく。その活動実績を以て、尿路結石予防に対する有用性検証のため、横浜市立大病院をはじめとする医療機関と協力して、尿路結石患者に対して本ボトルをサンプリング配布し、追跡調査を行う。
水を薬に見立てることで、「水を飲む」行為を重要視化することができれば、尿路結石予防に対して、有効な手段になりうる。最終的には、医師から「DHMO BOTTLE」を尿路結石患者に処方してもらうことを目指す。
また、水を飲むことは、尿路結石予防以外にも熱中症予防、老廃物の排出促進、血流改善など、健康全般に対して効果的であるため、一般の人々の熱中症対策向けなどへの展開も目指す。