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緩和ケアのための患者=患者家族=医療者間コミュニケーション・デザイン

緩和ケアのための患者=患者家族=医療者間コミュニケーション・デザイン

ABSTRACT

緩和ケアとは、「生命を脅かす病による、患者とその家族の心身の苦痛を和らげ、生活の質を維持・向上させる」ことを指す1。私たちは、神奈川県横浜市にある横浜南共済病院の緩和ケア病棟にてお話を伺った。病棟の理念は「がん患者さんのつらさをやわらげ、“生きる”をささえる」であり、医師や看護師を中心とした緩和ケアチームは、患者さんの病状や個性に合わせた対応のために、ご本人やご家族との対話や傾聴を大切にしている。この理念を体現する一助となるよう、緩和ケア病棟ならではの患者さん・ご家族・医療者の3者間のコミュニケーションをさらに活発にするための施策を考案した。

  1. 病室カスタマイズ

病室の壁のうち1面を、患者さん自身の部屋のようにカスタマイズできるサービス。あらかじめ病室にボードを設置し、患者さんの思い出の品を飾る。また、カスタムボードに飾る思い出の品を入れる専用の箱を用意。入院の際にご家族に渡すことで、積極的な病院への持参を後押しする。患者さんの人となりやこれまでの趣味などの情報が可視化され、ご家族・医療者とのコミュニケーションの起点となる。

  1. アロマ・コミュニケーション

現在、看護師から患者さんにアロマオイルを使ったマッサージなどのサービスを行なっている。この知識や技法を看護師からご家族へ伝えることで、ご家族も緩和ケアチームの一員としてコミュニケーションに参加できるようになる。また、ご家族が手順などに迷った際のフォローのための”アロマ手帳”を提供する。

これらの施策を持って、病からの回復を目的とする病院機能の中で、特異的な機能を有する緩和ケア病棟が、“生きる”をささえるための病棟のあり方のモデルケースとなり、緩和ケア病棟に限らず、病院全体が患者さんの病からの回復に加えて、“生きる”をささえるようになっていくことを企図する。

AUTHORS

沖田 真奈 Okida, Mana TDP グラフィックDTPコース卒業
海賀 一早 Kaiga, Kazusa 看護師、大学院生
菊地 真実 Kikuchi, Mami TDP Webコース卒業
菅原 遥 Sugawara, Haruka TDP 空間デザインコース卒業

REFERENCE

  1. Palliative care. World Health Organization fact sheet. 2020.

    https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/palliative-care